『絵島生島』
=7:『若手俳優が溺れた禁断の世界。しくまれた情事と、公安のワナ』の巻=
お芝居じゃなく、所作(踊り)です。
タイトル『江島生島』(えじまいくしま)。
大正時代の作品です。なにしろ大奥の大スキャンダルが題材なので、
江戸時代は絶対舞台化できなかったのさ。
赤穂浪士が吉良邸に討ちいった事件とかの少しアトのおはなし。
大奥女中、大年寄、絵島様(舞台では江島様)(32)は
歌舞伎役者の生島新五郎に夢中になって毎日芝居見物に出かけては
芝居も見ずに裟敷席で乱チキさわぎ。
結局その筋の手入れがあって、絵島様は信州の山奥(その名も高遠)に流刑、
生島新五郎は島流し、生島が出てた山村座はおとりつぶし、の大さわぎ。
その後しばらく芝居小屋では裟敷席が禁止されたり大きい劇場が作れなくなったり、など、
近世演劇史を語る上で避けて通れない大事件です。
チナミに生島新五郎、年増の絵島様の手玉にとられた美青年として
語り伝えられているのですが、
この舞台もそのイメージで作られていますが、
死んだ年から逆算すると事件当時40前後、
ジャニ系のツバメっていうよりテクニシャンのホストタイプだったと思われます、
どうでもいいけど。
踊りの内容は、島流しにあって狂った生島が
島の娘を江島だと思い込んであわれに踊るというもの。
狂女が踊る舞台はけっこうあるんですが、男が狂って、というのは、
これと「保名」やすな が有名かな。
絵は回想シーン、江島と生島の江戸での船あそび。
当時の江戸のぜいたくと粋がよく表現された美しい場面です。
生島新五郎、さすが役者です。つづみを打ち興じています。
“打って”じゃなく“打ち興じて”って表現にハマるところがポイントで、
つまり、
桜の季節、大川(隅田川)の船の上、澄んだ鼓の音が
月に照らされた水面に、美しく響きわたる…。
そうやって音とまわりの景色との調和を楽しむのが、“打ち興じる”ってコトです。
風流ですねえ。
鼓って、すごーく上手じゃないといい音出せないですし、
趣味と教養とを兼ね備えた当時の粋人ならではの、ちょっとしたおあそびです。
日本人ならこういうレベルを目指さなくちゃね。
そもそも役者さんはちゃんと舞台上で鼓打って見せてくださいますが、
これができる日本人は、もはや絶滅
(というか最近役者さんもそのへんアヤシイかたが何人か)。
ところで、この絵島様、本命は、ぢつは何と、あの、二代目団十郎だったんだそうです。
どっかにアップしてるはず、助六のイラストの、紋所を見てみましょう。
杏葉牡丹(ぎょぎょうぼたん)、これ、モトモトは絵島様の紋で、で、
団十郎に自分の紋の入ったプレゼントを送りまくった結果、
当時上演していた『助六』の衣装にもこの紋がはいっちゃったんだって、すごいね。
でもでも団十郎は、おカミにニラまれるのがイヤだったから
絵島様から手を引いて、生島新五郎を身代わりにしたんだそうです。
ひどいハナシだ…。
現行上演の「助六」にも、「ゆかりの方の・・・」と言って高遠の方角を拝む場面があります。
気を付けてみてみてね。ストーリーとは関係ないけど。
ていうかだいたいさ、キレイどころの役者が犯罪者と一緒に島流し、絶対もー、
当時のセックス観からしても、とんでもない目に・・・。
…下品にまとまったトコロで、また次号。
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