=『御所五郎蔵(曽我綉侠御所染)』=
=13:『春をコトホぐ色男のかほり』の巻=
お正月です。
初春花形歌舞伎ってやつです。
字を見るだけでも華やかでしょ?
さて、上方では違うんですが、江戸では伝統的に春芝居はるしばい(正月興行のコト。この表現も超好き)には『曽我もの』 を出すコトになってます。
今でも一本くらいは毎年混ざってるんじゃないかと思います。
『曽我もの』 。
父を殺された曽我十郎(兄)、五郎(弟)の兄弟が艱難辛苦の末、敵の工藤祐経を富士のすそ野で討ちとって死んじゃうまでの話、これが『曽我物語』ですが、
この『曽我物語』をモチーフにした歌舞伎の作品群の総称が『曽我もの』です。
戦前くらいまで『曽我物語』は『忠臣蔵』と同じくらい人気があったそうですが、今は時代劇っていうとどうしても江戸ものか戦国ものだし、時代設定が鎌倉の『曽我物語』は忘れられつつあります。残念ですってば。
『寿曽我対面』 (ことぶきそがのたいめん)。
仇討ち直前の、敵の工藤と兄弟との対面を描いた名作。
これをはじめとして歌舞伎の『曽我もの』は、とにかく最低一本、毎正月上演する必要上、作品数はとても多く、内容もひたすらバラエティーに富み、
はっきりいってバラエティーに富みすぎて、曽我兄弟とは全然関係ないハナシもたくさんあったりします。
このシリーズの第一回で赤フン見せてくれてる花川戸助六も“実ハ曽我五郎”というワケわかんない設定になっているので一応『曽我もの』だし、
そんなのじつはまだマシで「タイトルに“曽我”がはいってるだけ」って作品がたくさんあります。
今回描いたのも実はそう。
『曽我綾挟御所染』 (そがもようたとしのごしょぞめ)が正しいタイトル。
通称『御所五郎蔵』 ごしょごろぞう。
主人公は、この御所五郎蔵。曽我五郎も十郎も出てきません。でもそれでお客さん別に怒らないで楽しんで見てたんです。
…なんか、いい時代ですよねえ…。
といっても、これ、この絵は六代目菊五郎だから、上演は大正か昭和初期。
なんだかね、最近思うんですが(じじくさ…)、この国ってほんとについ最近まで
江戸のニオイがしてたんだなって…。
御所の五郎蔵、武士だったんですが、ワケありで今は吉原の男伊達=ヤクザさん。
いろいろあって、恋人の花魁(おいらん)に手ひどく振られたと思って仕返しに殺しちゃ……ったつもりが、間違えて他の花魁、しかももと主君の恋人を斬っちゃいました。
もうタイヘン、っていうかちょっとマヌケ…。
吉原のかっこいい男伊達の代表といえば“助六”ですが、
この“御所五郎蔵”、女に振られて負け惜しみを言ったり、殺す相手間違えちゃったりと、助六と違ってかっこわるい部分も多く、そのぶんキャラクターにリアリティーがあるのがウリです。
衣装もジミというか、いや、派手なんですが、現実にありそうなデザイン。
“かっこいい、お芝居の主人公”としても当然楽しめるけど、同時に“現実にいそうな、リアルなセックスアピールを持った男”としても楽しく鑑賞できちゃう、
二重におトクなキャラクターなわけです。
作られたのは江戸末期、
曽我の五郎や助六みたいなおおらかな英雄だけでは間がもたなくなってきた時代なのかもしれませんね。
もちろん、大げさな役もリアルな役も、いい役者さんが色っぽくやってくださって、初めてかっこいいんだけどね。
次回もいい男のハナシ…。
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