=『象引』=
=14:『他のお芝居のセリフだけど、こいつは春から演技がいいわい』の巻=
えっと、お正月らしいネタってコトで『象引』(ぞうひき)。
歌舞伎十八番のひとつです。
『○○引き』って演目が、歌舞伎にはけっこうあります。
『車引き』、『草摺引』くさずりひき、『卒塔婆引』そとばひき などで、
これらはほとんどが“荒事”あらごとっていうジャンルにはいります。
所作(踊り)もあるけど、「荒事系の所作」ってかんじね。
「荒事」というのは、お芝居の中の
主人公の荒々しい男らしさが表現されてる場面、と思えばだいたい合ってます。
荒々しさ、強さを強調するために様々な演出様式が工夫され、名場面が多く伝わっております。
多くの場合お芝居全体からその部分だけ抜き出して独立して出します。
あるイミ歌舞伎(特に江戸歌舞伎)のエッセンスといえましょう。
んで、それはそうと“○○引き”のハナシ。
運動会でやる「綱引き」。
あれがモトモトはお祭り、祭礼のイベントのひとつ、つまり
「神事」だったってハナシをするとわかりやすいと思うんですが、
昔からこの国では
“何かをちからいっぱい引っぱり合うという行為によって魔を払う”
というコトを考えてたらしいです。
「○○ひき」は魔除けなワケ。
とくに代々の市川団十郎(「荒事」の総本家ね)は、成田不動尊の化身とされており、
正月早々その力強い姿を見るコトは、
とても縁起のいいコトとしてよろこばれたのです。
って、神事と不動明王じゃジャンル違い、江戸期の神仏混淆のいい例かなあ。
と、なんか文化的なハナシ。ふふ。
ま、見る側にとってはかっこいいおにいさんがきれいで楽しい舞台見せてくれれば
「荒事」の成立事情や民俗学的意義なんてどうでもいいですよね。
だいいち、本気で“魔除け”なんてされたら、俺、きっと歌舞伎座に入れねえ(笑)。
この『象引き』、18年前の復活上演のときの衣装ですが、
数ある荒事のなかでも、ここまで脱ぐ例はめずらしく、この派手な筋肉クマドリ、
まあ、肉襦袢(綿が入ってる着ぐるみだね)なんだけど、なんかワイルドでいいですよね。
でもこのおシバイ、「象さんがでてる」ってこと以外、なにも見どころがないせいか、
明治以降の上演は4回くらい。
江戸時代は象はめずらしかったろうけど、今は歌舞伎座に行くくらいなら上野に行きますよね、同じ銀座線だし。
『大熊猫引き』にでもしとけば今でもウケたか…?(パンダだよん) あ、でも上野にいるか。
おハナシも、もとはいかにも江戸初期の古劇らしいイマイチ首尾一貫しない内容で
あんまりオモシロくなく、
この絵の復活上演のときには原型を生かしつつ、ずいぶん工夫して作り替えております。
なんといっても、でも、最大のネックは、この、ぬいぐるみの象…?
かわいすぎ…?
多分昔の上演資料に合わせて作ったんだと思いますが、
もうちょっと怖くないとお話が盛り上がらないかも。
とはいえ俺なんかは、こんなかわいい象さんが
毎正月歌舞伎座に出てくれたら楽しいだろうな、とか、
んで、元旦には銀座通りとか行進しないかな、とか
ワクワク考えちゃいますが…。かわいいじゃん?
…今年もヨロシクです。
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