=『伊勢音頭恋寝刃』=
=20:『夏の夜のお約束』の巻 =
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  夏ですね。…暑いです。
夏の出しものといえば、昔も今も、そう、
ホラー、&スプラッター。お約束です。
今月の絵は、見たとおり、スプラッターのお話、
『伊勢音頭恋寝刃』(いせおんど こいのねたば)。
信じられないと思いますが、昔の日本人はメッカ巡礼のイスラム教徒なみに 「お伊勢さま」へのおまいりに熱心で、「一生一度はしたいもの」でした。
お伊勢まいりは、観光もついでにやっちゃったり、 おまいりが終わったら、ちゃんと宴会がセットだったり、 同じやるなら 楽しくやりたい神信心♪
てなワケで、とても繁盛していた伊勢周辺の宿場町 古市(ふるいち)が舞台です。
全編通すと、伊勢の観光名所が全部舞台上で見物できちゃう上、 芸者さんがずらっと並んで伊勢音頭を踊る(しかも踊るの役者さんだからすごくうまい) シーンもついてるおトクな内容。
モデルになった古市での事件は、ホントに
キれたにいちゃん、通行人を無差別殺傷、のノリの ただの傷害事件なんですが、
そこはお芝居になると それなりに説得力のある刃傷(にんじょう)場面になるからすごい。
といっても、最近はストーリーがわかるように全編通すコトはとても少なく、
夏だもん、夏らしく、スプラッターな部分だけの上演。
主人公の<福岡貢(ふくおか みつぎ)が、だまされて、ハメられて、いじめられたあげく、 逆ぎれしてあばれる、
とてもわかりやすいお芝居になってます。
色男の福岡貢がマゾヒスティックに苛められたあと、今度はサディスティックに斬りまくる、
それぞれの場面をあんまりフクザツなことは考えずに見て楽しむのが 正しい鑑賞の姿勢ってことでございます。

始めに登場したときは福岡貢、白ガスリに黒の羽織、マジメでかたそうなかんじ、
それが途中で羽織を脱いで、白がすりって夏の薄手のキモノで、
それ一枚で立ってると、キレイだけどプライドが高くてモロい主人公のイメージが すごくよく伝わってきます。
それにね、このお芝居の舞台装置というのが不思議な中間色に満ちていて、 桃色とか草色とか。
役者さんもそれぞれキレイな色合いのキモノを着ていて、 思えば夏芝居にしては暑苦しいくらいで、
その中で 苛められてる福岡貢がモノトーンで浮いているのが、とても効果的です。
その白いキモノが、最後は血に染まって、汚れてみだれて、
それでも、まだまだ斬りまくる。 そう、白いこのキモノは「墜ちていく男」の象徴なのです。
サディスティックに斬ってるようでじつは、この場面もけっこう、 マゾヒスティックなエロティシズムに満ちてたりするんです。
そういう目で楽しんでいると、通しで上演するときのいろんなフクザツな裏事情なんて どうでもよくなっちゃうからフシギです。
夏だし、暑いし、いろんなコトは考えないのが、やっぱりいいかも。
キレイな画面の中で、いい男見て楽しんで、みたいな。

でもでも、ホントは、通しで見ると福岡貢、 すごくまじめで頼れるいい奴なんだってば。

かっこつけて白がすりの浴衣で見に行って、
コーヒーやカレーぶちまけてスプラッター浴衣にしないようにね…。


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