=『鎌倉三代記』=
=23:『いい男ならここまでしなくちゃ』の巻=
『鎌倉三代記』(かまくらさんだいき)ってお芝居に
いい男が出て来ます。
名前は三浦之助義村(みうらのすけ よしむら)。
どこが姓やら名前やら区別がつかないですが「揚名の助」という制度とその形骸化の歴史について説明するのめんどくさいからとりあえず気にしないで進むように。
キレイな鎧を着てますがたいしてエライ侍じゃないです。
お父さんが武士だったんですが、死んだのでお母さんは山の中に隠居、三浦之助も平民っぽく育ちますが、もとの主君であるお殿様に近衆としてスカウトされて、武士にもどります。とかいう設定。
というかお殿様の近衆にスカウトされた美青年という設定自体なんだかアヤシイ気がします(ストーリーとは関係ない疑惑です)。
で、時代は一応タイトル通り鎌倉、闘う敵は北条時政ですが、実際のモデルは大阪夏、冬の陣です。詳しくはややこしいので割愛。
三浦之助、なんと、敵の大将北条時政の娘、時姫さまと恋人同士。
だから時姫さま、「お姫様」の定番の衣装、キンキラキンの赤い振り袖を着て、
山の中にある三浦之助のの貧乏で汚い実家でけなげに病気のお姑さんの看病です。まあよくできた嫁ですこと。
こういう「いい男に一目惚れしてひたすら追いかける美しい娘」というモチーフは、歌舞伎、というか文楽にとても多いです。時姫はそのひとつの典型です。
ここで現行上演では出ないんですが、近所のおばさんにしかられながら(下手だから)時姫さまが一生懸命ごはんの支度をするシーンが本当はあります。
ここが出たほうが、時姫さまの「押し掛け女房奮闘」っぷりがよくわかって楽しいし、彼女の一生懸命さがよく伝わるので、
後半、三浦之助とのやりとりで泣くところもわかりやすいと思います。出せ。
さてこの三浦之助
、どれくらいいい男かというと、
ここまで尽くしてくれるけなげな時姫さまにむかって何と言ったかというと、
「じゃあ、ヨメにしてやるから、ちょっと行って父親(つまり北条時政)殺して来い。」
いやちょっとまて、ひどいでしょうそれ。
いや、もちろんね、三浦之助、戦で重傷負ってて、またすぐ戦に行くし、確実に死ぬし、
それにしてもねえ、愛がないよね。
いい男が、恋人「惚れた弱み」につけこんで(笑)いろいろムリを言う話は他にもありますが、
家宝の兜盗んで来いとか、多いのは「ちょっと100両ほどなんとかならない?系」とか。
でも、ここまで要求が多大な例はちょっとないでしょう、ひどい。
この絵のかたは、中村梅玉(なかむらばいぎょく)。
昔、福助って名前だったときからこういう役が得意でした。
どういう役かって、つまりひたすら女(もしくは家臣)に尽くさせて、自分は何もしないでキレイにしてるだけで、
どんなにまわりがシュラバになっても、本人は絶対汚れないでキレイなまますましてる・・・って役。
…いいんです。誰も文句言わねえんだから。
本当にキレイな男なら、キレイなままでいてほしい。
自分たちのつらく汚ない現実に墜ちてきてほしくない。
…歌舞伎の「キレイな男」って、ビジュアルだけじゃなく、生きかたがキレイです。
悪くいえばナルシスティック、ここで言えば、三浦之助、主君への忠義に命かけてます。
っていう、その美しい生きかたのためなら、
まわりのヒトは犠牲になってもノープロブレム オールオッケイ。
それが歌舞伎。
けっして、それは理不尽で不自然な約束ごとなんかではなく、
…だって、キレイなんだもん。
どんなコトでもしてあげたくなるような、
つまり、このレベルまでキレイなら、何やっても許されるっていう
問答無用の美しさ、気高さを、リアルに体現して見せてくれるのが
歌舞伎役者の芸のレベルの高さってやつ。
三浦之助、じつは瀕死の重傷で息もたえだえ。
死にそうな演技をしながらりりしい若武者の力強さもビンビン見せなきゃいけない、
超むずかしい役でもあります。
いや、本当に、みるたびうっとり…。
ところでもともとの文楽のセリフをちゃんと聞くと三浦之助
、「2枚目風の色男」というよりは「大男」で「荒武者」です。「いい男」ではありますが。
時姫さまなかなかシブめの趣味、北条時政の娘だもんね。
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