=『宮島のだんまり』=
=24:『その名も傾城飛び六方』の巻 =
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両性具有
歌舞伎はよく両性具有的だと言われます。
男が女を演じるんだからある意味当然ですが、 あと、ネタとして女装した男のハナシも、当然たくさんあるしね、 弁天小僧とか。
ちなみに今の菊之助の『弁天小僧』はほとんどストリップです、 目のやり場に困ります(困らねえけど)。いいのかあんなに派手に脱いで(ワタクシはかまいませんが、というか作品の本質的な価値を体現しているとも言えますが)。
逆に女が男装するネタがほとんどないのが不思議なんですが、 だってね、近代以降はこっちのネタのほうがむしろ多いし、
まあ、近代以前って男色がむしろ日常的だったから 「女装する男」のほうが感覚的に自然だったってコトでしょうか。
あと、『女装した男』のほうがセックスのニオイがすごく強い…。

そして、両性具有の極めつけが、これ。
『だんまり』っていうジャンルの演目があります。
歌舞伎ならではの意味不明の演目です。
くわしく説明すると長いんですが、おおざっぱに言うと「暗闇で複数の登場人物が何かを奪い合う様子を、模式的に見せる出し物」です。
2、3人〜数人がお互い手さぐりで争う様子を比較的リアルに見せる、立ち回りの一種とも言える「世話だんまり」と、
10人ほどの着飾った登場人物が踊りのように動く、完全に様式化している「時代だんまり」とがあります。

これは「時代だんまり」の典型、
『宮島のだんまり』っていう演目の主人公、袈裟太郎 けさたろう ってヒト。
『宮島のだんまり』、安芸の宮島の景色がキレイなので 『だんまり』の中でも人気があります。

袈裟太郎、盗賊の親玉です。荒くれ者ですね。
大百まげ(剃ってから百日たったふうのまげってイミ)という荒事風のカツラをつけて、衣装の下には鎖帷子を着込み、一応荒事ふうのかっこをしていますが、ディテールをよく見ると、 ところどころ女です。あれえ。 袈裟太郎「だんまり」前半ではきれいな傾城(けいせい、遊女のなかでも一番ランクの高い方々の名称)、に化けていたのです。
大ドロボウですから変装の名人なのです。で、後半イキナリ傾城の華やかな衣装がぶっ返って (「ぶっ返り」の詳しい説明も長くなるからやらない、)この盗賊の衣装に変わるのです。
結果、こういう統一性に欠けるかっこになってるんですが、
でもでも、ご存じのように歌舞伎の衣装の「早変わり」の技術レベルは世界最高水準にあり、 こんな中途半端な変身はホントはありえないのです。
この統一性のなさは、じつはわざとなの。
一人の役者が美しい遊女も、ごつい男も演じわけられますよっていう 実力のアピールでもあり、また、その両方を一度にみせるサービスでもあるわけです。
だから役者さん、この衣装でかっこよく「見え」をきったり、色っぽく歩いて見せたりとおおいそがしです。
この役のすごいのは、男、女、「どっちともつかない」んじゃなくて、 「男、女どちらにも見えて、どちらとしても魅力的だ」ということだと思います。
役者は男としても愛され、同時に女としても愛されたのです。
もう、「女に見える男」なんてレベルのなまっちろい両性具有ぶりは、 歌舞伎にとってはアタリマエすぎる日常でしかないんですよね。
ここまで「両性」を「具有」できてしまう肉体は、訓練された歌舞伎役者しか持っていないし、
そのイメージは歌舞伎という演出の世界の中でしか体現できないはなれわざだと思います。
ええと、初めて歌舞伎、とくに『だんまり』をみるときは、 わけわからないと思うので事前に「筋書き」とかを買って見ましょう。参照=歌舞伎座で安く楽しく歌舞伎を見よう=
広瀬川にメールくださるかBBSに書いてくだされば解説します。



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