=『博多小女郎波枕』=
=26:『「宗七これよりお礼を申す」、も有名。』の巻 =
有名な近松門左衛門って作家はモトは人形浄瑠璃、文楽の脚本家で、
(一時歌舞伎も書いてたけど)
それも今みたいな3人で使う大きい、複雑に動く人形が
発明される前の時代の作家だから
今とは条件が違いすぎて、文学作品としては高く評価されながら、
おハナシも面白いのに、このヒトの作品は
原形のまま上演されるコトは殆どありません。
でもやっぱ、セリフとかシブいのが多く、
この作品、
『博多小女郎波枕』(はかたこじょろうなみまくら)
(『恋湊博多調』(こいみなとはかたのひとふし)てタイトルだっけ今は)でも、
海に投げ込まれた主人公の小松屋宗七が、おとなしそうな若旦那だと思ってたら、
なんとか小船にたどりついたとたん、
「小松屋宗七、一人は死なぬ!!」と
なかなか激しいセリフを叫んでみせてくれたりします。
やるじゃん、と思わせる一瞬です。
こういう気合いの入ったセリフがひとつ入ると、
見ていても思い入れの度合が違ってくるというか、
とにかく楽しくなっちゃいます。
おハナシが面白いのももちろん大事だけど、セリフもやっぱり大事。
絵は、その宗七を海に放りこむ海賊(というか、密貿易商人)の親玉、
毛剃九右衛門(けぞりくえもん)
長崎ナマリがすごくてほとんどセリフがわからないのが特徴の(笑)、
セリフ覚える役者さんも超大変な役。
この絵の前の場面ではもっと海賊らしい衣装です。
首にえりまきみたいの巻いて中国風と南蛮風が混ざったデザイン、
そんでギヤマンのグラスでワインを飲むのさ。
よろず異国風にするコトで、インターナショナルに稼ぐ男の
スケールのでかさを表現してます。
かっこいいだろ。
船の辺先に立っての“汐見の見得”は
腕の動きだけでそのケタはずれのスケールを表現しなきゃいけない、
とてもムズカシい“見得”です。
そんでうってかわって、おしゃれしてるのがこの絵。髪形まで違います。
陸に上がってごひいきの芸者「小女郎」(小さいワケではない。)に会うために
おしゃれさんなのさ。
かわいいやつです。
そんで小女郎の気をひくためにお金をいっぱい使います。
これはビロードの生地に珊瑚を使ってますが、
なんかペルシャじゅうたんみたいな生地を着てる舞台もありますが、
歌舞伎の中ではちょっと異色の衣装デザインだと思います。
なんか、和風じゃないというか、それがおハナシの中に
違和感なくハマって生かされてるのが楽しいトコロです。
ギヤマンのグラスもこの衣装も原作には細かい指定はなく、
はじめたのは江戸後期の名優七代目市川団十郎、
長崎興業のときご贔屓にもらっておいて、舞台で使ったんだそうです。
それやこれやで毛剃九右衛門のキャラクターはどんどんふくらみ、
原作では主人公だった宗七をおしのけて歌舞伎の舞台ではこっちが主役に。
こうやって歌舞伎は常に新しい工夫をとりいれつつ
進化を続け、現在に至ります。いい例だな。
でもね毛剃九右衛門、いっちばん始めのシーンでは
汚ねえ綿入れに丹前姿。これが妙に似合ってシブいのだ(笑)。
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