=『うかれ坊主』=
=28:『真冬もこのかっこです。本当。』の巻 =
『浮かれ坊主』
タイトルどおり、浮かれたかっこの坊さんの踊りです。
すごいでしょ、殆どハダカですが、これは衣装として奇をてらったものではなく、
ホントにこういう乞食坊主が、江戸の街にいたのです。
“願人坊主”(がんにんぼうず)っていう職種で、
モトモトは月待ち、日待ち、つまり決まった日の月の出や日の出を待って、
出てきた月や日に願掛けをするという宗教行事。
お正月の「初日の出待ち」に今でもその名残を留めてますが、
ほら、ずっと待ってるのメンドウでしょ、「日待ち」だと徹夜だし。
だから代行業者がいたんです。それが願人坊主。
他に庚申待ち(こうしんまち、これも徹夜)の代行や、寺参りの代行も請け負いました。
大阪では「すたすた坊主」と呼ばれて水垢離の代行専門だったそうです。寒そう。
このようにカラダを張ってシノギを得ている彼らですが、
江戸も時代が下るにつれ、「月待ち、日待ち」はただの宴会になり果て、
寺参りも旅行やお散歩気分(まあこれは平安時代からそうだけど)、
楽しんで自分でやるか、あとはお金払ってまでやらないってかんじに
なっていったモヨウ。
モトモト彼らはお寺さんのおちこぼれ。字も下手だしお経もよく読めない。
仕事がないとき彼らは、道端でおどってお金をもらっていたのです。
主に「かっぽれ」や「チョボクレ」ってのをおどりました。
その様子を舞台に再現したのが、この『浮かれ坊主』さ。
このナサケナイ格好を「笑える」「びんぼ臭い」じゃなく、
「セクシーで楽しい」と見せるコトができるかどうかで、
この踊りの善し悪しは半分くらい決まってしまう感じ。
願人坊主の「かっこ悪さ」じゃなく、そのいいかげんさとか、でも楽天的なトコロとかが
伝わってくると、見ててとても楽しい気分になれちゃいます。
これね、よく見ると、振りとかムズカしいコトそんなにやってない。
「素人の踊りの真似」なんだから当然だけど、
だから、にぎやかに踊ってるようで、見るヒトを楽しませるのは意外と大変かも、な踊りです。
でも、「願人坊主」が実在しなくなっちゃった今、
そのイメージをわれわれにわからせるのって、すごくムズカシイんじゃないかって思います。
こういう市井(しせい)の生活感のリアリティーが充分表現できなくなるコトが、
歌舞伎を伝えていくコトのムズカシさなんだろうなあ。
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