=『盲長屋梅加賀鳶』=道元=
=39:『枕付きの揉み療治』の巻=
今月も先月の続き
『盲長屋梅加賀鳶』 めくらながや うめがかがとび
のおハナシ。
つづきだけど、実はつづきじゃないです。
何故かと言うと、この『盲長屋』 というお話は、
ほとんど関係ない二つのストーリーがくみあわさってできており、
現在上演するのは、今月描いてる、この
『あんま道玄』 の筋の部分のみ。
先月描いた『勢ぞろい』 は、もうひとつの筋にしか関係ない場面なのです。
ね、同じお芝居のハナシだけど、続きではないでしょ?
さて、『あんま道玄』の部分の筋は、犯罪がらみ です。
道玄はニセ盲の按摩(あんま)さん。
「盲長屋」に住んでます。これがタイトルの由来です。
ただし江戸時代に実在した「盲長屋」は目の見えないヒトが集まって住んでいる長屋ではなく、今の本郷通り沿い、加賀前田藩のお屋敷のそばの長屋、なんだか加賀様の行列がのぞけないように通り沿いには窓がなかったらしいです。だから「盲長屋」。
お芝居ではこの道元をはじめとして目の見えないひとたちがたくさん住んでいる裏長屋として描かれます。
で、道元、悪人です。
って、そもそも「にせ盲」ってトコがすでに犯罪ですが。
道玄、深夜の御茶ノ水の土手(昔は人気が亡くて真っ暗だったのだ)で金目当てに人殺しをしたり、
小金をためた女按摩さんをダマして結婚して、お金は勝手に全部使ってしまって、
さらにまだ10代前半のそのムスメを売りとばす計画をたてたりします。
絵はそのシーン。
横にいるのは愛人で、これも按摩さんの
おさすりお兼 さん。
このかた、ただの按摩さんじゃありません。
「二朱より安い按摩はしないよ」 だそうです。江戸末期で二朱といえば、
7千円ちょっと。:」参照=江戸時代の貨幣価値=
按摩の値段としては高すぎです。普通は50文か100文です。
そう、お兼さんは、違うジャンルの「マッサージ」 のヒトなのです。
貧乏臭くて悪人ななかにもちょいと色気がなくちゃいけません。
道玄もそのお兼さんに惚れられてるあたり、ただの犯罪者じゃなく、そのへん男のフェロモン出さなくちゃいけません。
江戸時代、盲人は法律的に優遇されてはいましたが(官位を買うと年金がもらえた、あとは盲人は高利でお金を貸していいことになっていた、どっちもモトデがないとダメだけど)、
それでもやはり貧しく、暗い雰囲気の長屋で、
殺人、ゆすり、売春、人身売買 、
そして女や子供を棒でひっぱたいたり縛ったり、と、
かーなーり、凄惨なシーンがつづく・・・はずのこのお芝居ですが、
見てるとあんまり違和感ないです。
たあいもない犯罪のかんじ。
最後、加賀鳶の頭の松蔵(配役によっちゃ梅吉)が出てきて
道玄はやっつけられて、で、本郷赤門前の大捕り物の末捕まっちゃう、のが
はじめからわかってるせいでもありますが、
このお芝居、明治の中ごろに書かれた ってこととも無関係ではないでしょう。
そう、これ、喧嘩も犯罪も、すべて、
江戸の記憶を色濃く持つ明治の観客に見せるための
上質のファンタジーだといえば、
いちばんハマるかんじです。
通しで上演しないせいでワキのひとびとが背景に同化してしまっているのが残念なんですが、
本当は出てくる人物ひとりひとりが、みんな、やることなすこと江戸のニオイなのです。
それがいいのよ。
開化以来われわれが求めてやまない、そしてついに忘れかけてる
あの、黄金時代の、その楽しさを味わうための、これはお祭りなのです。
うきうき。
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