=『楼門五三桐』=
=40:『馬子にも衣裳とは言うけれど』の巻=
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『櫻門五三桐』 さんもん ごさんのきり と 『釜淵双級巴』 かまがふち ふたつどもえ。
どっちも石川五右衛門 のお芝居です。
今は両方混ぜてひとつのお芝居にして通し上演することが多いです。
というか五右衛門、人気者だからお芝居も昔からたくさん作られ、 決定稿ってほどのモノはないし。
『櫻門五三桐』のほうは、あの、南禅寺の山門の上で
「絶景かな 絶景かな」 って言う有名なシーンがある、あのお芝居。
豊臣秀吉とのカクシツを中心にストーリーが展開する、どっちかというと「時代物」です。
『釜ヶ淵』のほうは、この「釜」は処刑のとき五右衛門が油釜で煮られたことからきているタイトルですが、戦前ごろまでは五右衛門の息子を継母がわざと苛めたりする家庭劇っぽい「世話場」がときどき出ていたようです。ちょっと暗いので今は人気ないかも。
このお芝居での見どころは五右衛門が釜で煮られるシーンではなくて、
帝のお使い、勅使(ちょくし)に化けてお屋敷に乗りこんだ五右衛門が
大金をせしめて(ドロボウというより、詐欺?)、 家宝の玉印まで盗み出して(このへんドロボウ)、 葛篭(つづら)をしょったまま妖術を使って空中を逃げるシーン。
大きい葛篭が宙に浮いてると思ったら、それがパッカリ割れて、 中から、ひとまわり小さい葛篭をしょった五右衛門が出てきて、
そのまま空中をのしのしと歩いて逃げていきます。かっこいい。
「つづらしょったがおかしいか」というセリフは戦後しばらくくらいまで、五右衛門の定番セリフとして知られていました。

その、かっこいい有名なシーンを描かずに、今回描いたのは、
おハナシの前半で五右衛門一味に裸に剥かれて衣装一式を奪われる 、ホンモノの勅使のヒト。
えらいんだぞ、中納言だぞ 。
ワキ役ですが、下手な役者さんにはまかせられないむずかしい役だと思います。
イキナリ襲われて、木の陰に連れこまれて、次に出てきたら、
お供のヒトもどこかに行っちゃってますから、 びっくりして、あわてて、ヘンなかっこでうろうろ。
その全てを、どこまでも「お公家さんらしく」 演らなきゃいけないわけです。
衣装なしでも貴族に見えるというのは、なみたいていのことではないと思います。
で、まあ下帯、フンドシですが、それをながーく後ろにひきずっているんですが、
ねえ、普段山の中に男ばっかりでいる荒くれ者たちが、 白くていいニオイでキレイな中納言をハダカに剥いたら・・・
三べんやったら二回くらいは、やるコトやっちゃうと思うんですが、当然、江戸時代のヒトビトはそういうニュアンスをふまえてこのシーンを見たと思いますが、
とにかくね、
そういう目にあっても、とにかくもう、お公家さんはやっぱりなにがなんでもお公家さんなのです。
育ちまではひん剥けないから。
ひどいめに合ってパニックなんだけどおっとり品よくというか、
笑えるシーンだけど、ただのドタバタじゃなく、 そこはかとなくそういう品格を感じたいモノなのです。
ハダカなのが「ホンモノ」 で、衣裳を着てるのが(しかも幹部俳優が)、
「ああ、ニセモノなんだな」 と、リクツじゃなくわからせてくれるような役者さんが必要な役なのです。
しかも、チョイ役。
ムズカシイでしょうね。
昔は舞台に暖房なかったですから役者さん、冬は寒かったそうです。
肌にトウガラシをすりこんでがんばったんだって。
ああ、ホントに大変な役・・・・。



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