=『十六夜清心(花街模様薊色縫)』=
=42:『セックスと暴力のはざまで』の巻=
『十六夜清心』 いざよい せいしん と俗称されるお芝居。
正しいタイトルは『花街模様蘇色縫』 さともよう あざみのいろぬい
初演時(安政6年)のタイトルは
『小袖曽我蘇色縫』 こそでそが あざみのいろぬい。
初春狂言ですね。「曽我」がついてるもん。
正月早々見るにはかーなーり、きわどいおハナシです。
というか、幕府に上演禁止食ってる・・・。
主人公は、所化(しょけ、得度前の若いお坊さん)の清心 と
遊女の十六夜 (いざよい)。
お坊さんと遊女・・・すでにきわどいですね。
このふたり、関係がバレて、清心、一度は修行しなおそうと思うんですが、
廓をぬけだしてきた十六夜に口説かれてついつい心中を決意、ふたりで川に飛びこみます。
・・・が、清心、泳げるので死にきれず、ひとりで助かっちゃいます。
なんというか、意志薄弱 ですよねえ。
おハナシは、死にきれなかった清心 と魚の網にかかって助けられた十六夜 が、
やがてめぐりあって、一緒にいろいろ悪さをするっていうモノで、
前半はキレイな、後半はディープな、ふたりの愛憎関係を中心に事件が展開します。
それはそれでたしかにきわどいのだ。退廃してるのだ。
稲瀬川端、百本杭の場 の二人のラブシーンは、ドキドキするのだ。
にもかかわらず、このオシバイで、いちばんエロい とワタクシが思うシーンは、
寺小姓の恋塚求女 こいづか もとめ
求女って名前、男の名前なんですが、歌舞伎にはけっこう出てきます。
だいたい若いキレイな善人方の役の名前です。
寺小姓、先月も描きました。今回は本来(?)の目的に近い役割 。
懐(ふところ)の五十両ほしさにもみあううちに
清心がその求女くんを殺しちゃうんですが、そのシーンが、エロいのです。
もみあうカンジもまるでレイプしてるみたいだし、
死んだ求女くんの懐をさぐるトコなんて、エッチ目的 にしか見えません。
実は作者の河竹黙阿弥 、こういう「若者殺し」のシーンを
多々書いていまして、絶対ねらってるとしか思えません。
「殺す」という行為にかこつけてセックスを書いてるのだと思います 。
殺すというのは、「肉体を思い通りにする」究極の手段。
だからこそ、暴力を伴うSMという行為にわれわれは興奮するんだと思いますが、
その、セックスと暴力の擬似性を利用して黙阿弥は
本筋とはべつにもうひとつの、よりきわどいラブシーンをわれわれに見せてくれるわけです。
サービス満点。
絶対、当時のお客さんはおお喜びでこのシーンを楽しんだことでしょう。
・・・で、上演禁止 。
いえ、このシーンのせいで上演禁止になったのではありませんけどね。もっと政治的な理由。
-42-