=『時鳥水響音(ととやの茶碗)』=
=45:『心すみだの川風に』の巻 =
”ほととぎす 自由自在に聞く里は
酒屋へ三里 とうふ屋へ二里”
てのは江戸時代の狂歌ですが、
今からは信じられないほど緑も多く、自然もそこらじゅうに残っていた江戸の街、
ホントに古地図見ると浅草寺のすぐ裏手に畑があるし、大名屋敷は森みたいなもんだしね。
それでも
本来山に住むほととぎす の初夏の声は、そう気軽に聞けたもんではなかったようです。
まあ100万都市だもんね。
『時鳥水響音』 ほととぎす みずにひびくね
この超かっこいいタイトルのお芝居は明治3年の上演、
舞台は江戸の風情そのものですが、
時の鐘がゴ〜〜〜ンって鳴ったら「ああ、もう9時か」とか、
1両と1円とがごっちゃだったりとか、
明治になりたての混乱がそこここに見られます。
舞台は両国、隅田川 。
舞台に屋形船がでんと出てて、お金持ちの旦那とその妹とかが夕涼み。
これだけじゃ川っぽくないから小船が花道から出てきて、舞台までずーっと漕いできます。
旦那のほかに船頭や職人、お茶の師匠と
顔ぶれもしゃれたかんじで楽しいです。
と、そこに、ざんぶと身投げでございます 、おおさわぎ。
あわてて船にひきあげてみれば、これが五代目菊五郎そっくり の(本人だ)いい男。
お嬢様は、もう、うっとり。
道具屋の手代(従業員)だというその若者は、悲しい身の上話をはじめます・・・
ってストーリーだけど、
おハナシがホントにおもしろいのは陸にあがってからの短い部分、
この前半部分は若い、しっぽりぬれて水もしたたる主人公 の色っぽい風情を楽しむところ、
一度見て後半どうなるかを知ってるとますます楽しめます(教えない)。
それと同時にこの場面の見どころは、舞台そのもの、つまり、
初夏(旧暦五月の一五夜)の夕涼み 、新緑が美しい川辺、
川をわたる風の気持ちよさ、アスファルトもコンクリも排ガスもない時代の
この国の風のニオイみたいなものを、
生き物多かったからけっこう生臭かったと思うのよ、そういうのも含めて、ゆったりと感じてみたい、そのへんにあるんじゃないかと思います。
ホトトギスとウグイスの区別つかなくなりつつある昨今だからこそ、
そういう気持ちって大事だと思うんです。
なんたって歌舞伎の舞台ですから
船はともかくセットはそんなにリアルなもんじゃありません。
だから、江戸の風を感じさせてくれるのは
役者さん。
お天気のハナシをしながら「時鳥でも鳴きそうだ」 って言うその瞬間、
江戸の川風のニオイが感じられたら、
うれしいな。
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