=『三人吉三巴白波』=
=51:『男も女も魚も江戸前』 の巻=
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イラストは
=こちら=

初春気分の出し物です。
『三人吉三巴白波』 さんにんきちざ ともえのしらなみ  ってタイトル。
吉三 て名前の悪党が3人出るのです。
お嬢吉三お坊吉三 と、和尚吉三 。描いたのはお嬢吉三 。キレイでしょ。
吉三ってナマエのとおり、男だ
女装姿で油断させて相手を殺して金を奪う、とんでもねえ悪党です。
お坊吉三は、お坊さんじゃなくてお坊ちゃん吉三、 モトは侍、お家が断絶中なのだ、侍のナリをしてます。
和尚吉三はホントに坊さん。みなさん一癖ふた癖ある悪党。
キレイどころの女装の悪党といえば、まず思い浮かべるのが
弁天小僧 。以前俺も描きました。
作者も同じ河竹黙阿弥
ビジュアル的なインパクトはいい勝負なのに、 弁天小僧にくらべて、お嬢吉三、イマイチ知名度が低いのは、
弁天小僧が、美少年が女の子のカッコしてみました〜 、的な罪のなさを感じさせるのにくらべて お嬢吉三青年の女装
ヒトも殺すし、 お坊吉三との同性愛のニオイもプンプン。デンジャラスかつ不健康。
誰が見ても楽しめる系のエンターテインメントとしてはちょい不向き、そのせいかと。
でもでも、だからこそ、退廃的でスタイリッシュな美しさを追求しほうだいなワケ。
最近ハヤリの本「声に出して読みたいなんたら」 にも この場面のセリフ載ってますね。
読みたいというより俺はいい役者さんが言うのを聞きたいが。

月もおぼろに白魚の 篝(かがり)もかすむ春の空
冷てえ風にほろ酔いの 心持ちよくうかうかと


「厄ばらい」 と呼ばれる五、七調のセリフの代表。
最後が「こいつは春から縁起がいいわえ」 って有名な、あれです。
こんなの素人がなんの予備知識もなく音読してみたってイミねえと俺は思う。
いちおう訳すと
「月もおぼろに見えて、白魚漁の篝火もかすんで見える春の夕刻・・・」
これね、 江戸、佃島の成り立ちから語らないと季節感がわからないのですよ。
東京湾の埋め立て地佃島の漁師たちは、将軍の命令で大阪の佃村から移住してきた 漁業のエキスパートたち。江戸、好漁場のくせに漁師いなかったのです。
そして漁師たちは佃島をまるまるもらったかわりに、将軍に献上するお魚を捕ったのだ。
冬にやってたのが白魚漁
夜、江戸湾の沖に小舟を浮かべて篝火を焚いて白魚を捕ったんですが、 これは江戸下町の冬の風物詩で、
真冬のこおるようにすみきった空気のむこうに海の上、 ゆらゆらと美しく燃えるのが、「白魚の篝火」 だったのです。
広重も絵に描いてますね。
で、この舞台は冬じゃなく春です。旧暦のお正月(今の2月はじめ)がちょっと過ぎて節分の夜。
江戸、「節分」が3回あった街で12月30日と、明けて1月の6日と14日が節分でした。この場面は14日の夜、
舞台にも満月に近い十四日の月が出ています。
場所は大川(今の隅田川)端。
旧正月はいまの2月はじめだから、14日というと2月下旬、まだ寒いけど、日照時間は延びてますから 海や川はあたたまって水蒸気が発生、
海には霞が立つし空の月はおぼろ。
真冬には冷たく光る白魚の篝火も今夜はかすんで見えます。
春だなあ 、って実感するわけ。
冬から春への季節感のビミョウなうつりかわりを描いてるセリフなんだってば。
キレイでしょ?
自然と生活とがみごとに調和した江戸下町の景色の象徴大川端、季節は初春、 美貌の青年の女装姿もあやしく 、うっとりするような名場面、
てイメージがまずあって、「月も朧に・・・」って言うから楽しいんじゃん。

ストーリーは、この3人の悪党吉三たち、それぞれの親兄弟との因果がからんで どんどん追いつめられて、
最後は三つどもえで刺し違えて死んじゃいます。
けっこう暗いというか悲惨なハナシです。
ただ、3人の、まわりのひとびとも含めて、お互いを思いやるココロみたいのがとてもキレイに描かれています。
悪い事をしてても誠意とか思いやりとかはなくさないで一生懸命生きているかんじが、 陰惨なハズのこのお芝居の後味をよくしてるんだろうなと思います。
江戸という社会そのものが最低限の倫理観みたいなのを その底流に しっかり持ってたってことなんでしょうね。
街の中に自然が調和してたのと同じようにね。

絵のお嬢は先月も描いた橘屋、十五代目羽左衛門 、いいカンジでしょ?
マイブームいまだ醒めやらず・・・

「厄払い」全訳は=こちら=


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