=附『三人吉三巴白波』=
=附:一応「厄払い」全訳全文解説「声に出せというならちゃんと訳せ日本語」 =
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月も朧に白魚の 篝(かがり)もかすむ 春の空
冷てえ風にほろ酔いの 心持ちよくうかうかと
浮かれ烏(からす)のただ一羽 ねぐらへ帰る川端で
竿の雫か濡れ手で粟 思いがけなく手にいる百両


(呼び声)おん厄払いましょう、厄おとし

ほんに今夜は節分か 西の海より川の中
落ちた夜鷹は厄落とし 豆だくさんに一文の
銭と違って金包み 
こいつは春から 縁起がいいわえ


「キレイで調子はいいけど、文章としてはてきとー」と思われがちなこのセリフ、
江戸の節分は、12月30日、正月6日、14日の3回ありました。
今みたいに「鬼は〜外」とやったのは遊郭とか、一部の場所だけだったらしく、
町中ではみなさん年の数の豆に一銭、または12銭包んで、
家の外に捨てて、それだけだったそうです。ジミです。
で、これを拾い歩いたのがアウトドアライフのかたがた、
そのかたがたが歩きまわりながら
「おん厄払いましょう」といいつつ、「厄払い」のセリフをいいました。
「厄払い」のセリフというのは、この「月も朧に…」がお芝居では代表的なわけですが、
実際に節分の夜に彼らが言って歩いたのはいわゆる七五調のひとくさりのセリフであればなんでもよく、特に内容は決まっておらず、
なんかおめでたいコトを上手く語呂を合わせて言って、最後、
(厄を)「西の海にさらり」または「西の海ではないけれど、○○(水のある地名)にさらり」でしめくくりました。
「西の海」って九州の海のことですが、この場合
"地の果て=ここに流しちゃえば自分には関係ない場所、みたいなイミです。
という当時の生活習慣をふまえると、このセリフはとても首尾一貫した文章なのがわかります。

月も朧に白魚の 篝(かがり)もかすむ 春の空
ここまでは前の「男も女も魚も江戸前」で書きました。
冷てえ風にほろ酔いの 心持ちよくうかうかと
ここはいいな
浮かれ烏(からす)のただ一羽 ねぐらへ帰る川端で
「浮かれ烏」に後出の「夜鷹」に対して男色の売春の意味合いがあるか一応調べましたが、ないようです。ちぇ。
浮かれ烏は月夜を昼間と勘違いして飛び歩くカラス、この場合
月夜に遊び歩くお嬢吉三自身を指します。」
竿の雫か濡れ手で粟 思いがけなく手にいる百両
和歌の「縁語」と「序詞」の世界、上の「川端」の縁語で「竿」、
「竿の雫か 濡れ」までが序詞で「濡れ手で粟」を引き出します。
この百両は、お嬢吉三が夜鷹の娘を川に突き落として奪ったもの。

(呼び声)おん厄払いましょう、厄おとし

節分の夜だから声がするわけですね。
ほんに今夜は節分か 西の海より川の中
「西の海」とよく言うけど、今回はそれよりてっとりばやくていいぞ、川の中、みたいな?
落ちた夜鷹は厄落とし 豆だくさんに一文の
「夜鷹」はあの時代の路上売春婦、水のあるところに落としたから「厄落とし」なわけですね、
銭と違って金包み こいつは春から 縁起がいいわえ
そんで節分の夜、道に落ちてる包みは豆がたくさん入ってて、
一文銭がちょびっとなわけですが、 お嬢が手に入れたのは本物の金包み、そりゃ嬉しいですよね、
しかも夜鷹がこんな大金持ってるとは思わないから
お嬢的にはものすごく利益率の高い仕事だったわけ、で
「縁起がいいわえ」 と。
こんなかんじのイミでございます。



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