=『桂川連理柵』=
=53:『わが心にはかよわねど』 の巻=
『桂川連理柵』 かつらがわ れんりのしがらみ てお芝居の
「帯屋」 と呼ばれる段。
「連理(れんり)」というのは2本の木が根元で一本にくっついて生えてるものをいい、
「深く運命に結びつけられた夫婦や恋人同士」の象徴としてよく描かれます。
「柵(しがらみ)」は川に柵を作って蔓とかからませて流れをせきとめたもの。
「からみついて流れられない〜」苦しい状態を指すとともに、
「川」と「柵」は縁語でもあります。
上方のお芝居です。モトは文楽、
タイトルどおり、京都の「帯屋」っていうお店が舞台です。
この女の子はお隣の「信濃屋」の娘、お半ちゃん、14歳。
主人公の帯屋の主人、長右衛門と
「そういう」関係になっちゃいます。犯罪。
長右衛門は帯屋の主人だけど先代の養子で
真面目で仕事もできるいい男なのにいろいろ肩身がせまいのです。
隠居してる先代の後妻親子が性悪なのが原因、
ストレスたまってそうです。
奥さんのお絹さんもよくできたいいお嫁さんですが、
お嫁さんだから、やっぱり、タイヘンなの。
40近いのに、仲いいのにふたり、子供いないんですけど、
「ストレスね・・・」とか見ててつい思ってしまう状況ですよ。
長右衛門は隣のお店のお半と旅先で偶然会って、
あぶないところをたすけてやり、そして、まあ、つい、はずみで、
「そういうコト」になっちゃうのでした。
やっぱりストレスたまってたんだなあと、舞台見てるとそればかり(笑)。
この「帯屋」の幕ではお半と長右衛門のお話は後半だけで、
前半は延々といかに長右衛門がいじめられてるか、描かれます。
長右衛門は「しんぼう立役」と呼ばれる役柄の典型で、
ずっと舞台中央に背を向けて、うつむいて座ったきりです。
闘ったり言い返したりせず、ののしられても、ほうきでぶたれても、
ひたすらだまって耐える役です。エロいぞ。
はじめのほうは悪役の後妻親子(性格悪く素行悪く育ち悪い)ばかりが目立ち、
上方ノリの苛めっぷりが見ていてじつは少々疲れます。
そのアト、隣の信濃屋の丁稚長吉が出てきて悪ガキぶりで笑いを取り、
場は明るくなるけど、
いずれにしてもお店の内側のゴタゴタを延々見せているわけで、みっともいいモノじゃあございません。
このあと、先代主人半斎(はんさい、これはいいひと)の意見(説教だな)、奥さんのお絹との会話、と
しみじみしたシーンがあって、さて舞台に長右衛門だけになります。
で、ここでお半ちゃんがお隣の信濃屋ののれんからそっと顔を出すのです。
現行上演ではここで初めて問題の中心人物の顔をわれわれ拝むわけですが、
小首かしげた様子といい、もう、とにかく、かわいいの 。
女としてセックスや恋愛の対象としてどうこう、という以前に、
ただもう、かわいらしいのです。
性格のあどけなさや優しさが出てきたこの瞬間伝わってきて、
ああ、この子を守るために長右衛門苦労してるなら、もう、しょうがないだろう、と思わせる雰囲気です。
お半は本当に本気で長右衛門が好きになっていて、
しかも妊娠しています。
どうにもならなくてふたり、桂川で心中するんですが、
いわゆる「情死」というかんじじゃなく、恋愛感情に似ているけど、
もっと、なにか純粋な、お互いへの気持ちが
この舞台からは感じられます。
お半のかわいらしさと長右衛門の芯の強いやさしさ、包容力が
舞台から伝わってくるから
ふたりのそういう気持ちが無理なく実感できるんだろうなと思います。
短い舞台ですが、そういう意味でムダのない絶妙な構成だと思います。
後妻親子さえ上方の芸達者でそろえれば、あとは江戸風の役者さんでも
お芝居になっちゃうところも、べんり。
さて、現行上演だとお半、不細工な悪ガキ丁稚の長吉と同じ役者さんが早変わりでやります 。
もう、役者って、化けもの・・・・・。
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